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2026.01.05 blog

精子の調整法について

今回は、人工授精や体外受精、顕微授精には欠かせない重要なステップの1つである精子の調整方法についてご紹介させていただきます。

精子調整の目的とは?

人工授精、体外受精、顕微授精において、採取していただいた精液は、そのまま使用するのではなく、必ず調整し使用しています。
ではなぜ精液を調整する必要があるのかといいますと、主に2つの目的があります。

①運動性の高い良質な精子を選別・濃縮するため

精液中には運動性の低い精子や、未熟な精子、死滅した精子も含まれています。調整することにより、運動性が高く、かつ良好な受精能とDNA損傷のない良質な精子を選別して回収しています。

②精漿や不純物を除去するため

精液は、精子だけではなく、前立腺と精嚢から分泌される液体成分である精漿と、精子以外の細胞、細菌等も含まれています。これらは、人工授精や体外受精では受精の障害となるため、取り除く必要があります。

当院における精子調整法

当院では、精子の調整方法として原則的には密度勾配遠心法を採用しています。
この方法は、精子の密度を利用して成熟精子と未成熟精子・死滅精子を分別する方法です。
成熟精子の密度は、1.11〜1.12g/mLです。これに対し、未成熟精子・死滅精子の密度は、1.09g/mL以下です。
密度勾配遠心法では、密度勾配遠心分離用溶液である80% sepa sperm®︎液を利用しています。この80% sepa sperm®︎液の密度は、成熟精子と未成熟精子・死滅精子の分離を行うために1.10g/mLに調整されているため、遠心分離により未成熟精子・死滅精子は浮遊し、成熟精子は沈降します。沈降した成熟精子のみを回収し、1、2回洗浄をしたあと、人工授精や体外受精・顕微授精に使用しています。

また、同じ密度勾配遠心法でも、人工授精では連続密度勾配遠心法を、体外受精や顕微授精では2層の不連続密度勾配遠心法を採用しています。

人工授精の精子調整方法

人工授精は、精子を子宮内に注入する方法です。子宮内に精子を注入したあとは、受精の場である卵管膨大部まで精子が自力で泳ぐ必要があり、卵子に到達する前に多くの精子は死滅してしまいます。そのため、精子の数の多さが重要であり、より多くの成熟精子を回収するという目的で、連続密度勾配遠心法を採用しています。
連続密度勾配遠心法は、80% sepa sperm液の上に直接精液を層積し、回転台で回転させることで連続密度勾配を作製します。

人工授精の精子調整方法

その後、遠心することにより、未成熟精子や死滅精子は浮遊、成熟精子は沈降します。遠心後は、浮遊した未成熟精子や死滅精子を除去し、沈降している成熟精子のみ回収します。

回収した後の成熟精子は、洗浄を行い、人工授精に使用します。

体外受精・顕微授精の精子調整方法

体外受精・顕微授精は、卵巣から卵子を採取し、体外で卵子と精子を受精させる方法です。人工授精の時と比べて、精子が子宮から卵管まで泳ぐ過程がないため、人工授精の時ほど大量の精子は必要ありません。特に顕微授精は、1個の卵子に精子1匹を注入する方法であるため、数よりも質が重要となります。そのため、運動性が高くより良質な成熟精子を回収するという目的で2層の不連続密度勾配遠心法を採用しています。
2層の不連続密度勾配遠心法では、80% sepa sperm液の上に53% sepa sperm液を層積し、その上に精液を層積します。

その後、遠心することにより、未成熟精子や死滅精子は浮遊、成熟精子は沈降しますが、高い運動性を持つ精子は上昇してきます。体外受精・顕微授精では、成熟精子の中でも、より運動性の高い精子を回収したいため、上昇している精子をパスツールピペットで吸い上げて回収します。

吸い上げた後の精子は、2回洗浄したあと、適切な濃度(40×106/mL~70×106/mLが目安)に調整し、体外受精や顕微授精で使用しています。

最後に、今回ご紹介した精子調整方法以外にも、当院では主に顕微授精での精子調整方法として、ZyMotという精子調整方法も採用しています。
ZyMotについては当院のブログ(2025.07.01の記事)にて詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士

河村 寿宏 医師・医学博士

田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授

「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。

※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。