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2025.10.15 blog

PGT-Aの結果に見られるチャートの乱れは、妊娠成績に影響を与えますか?

2025年5月に広島にて開催された第66回日本卵子学会学術集会にて、「PGT-Aの解析結果に見られるノイズの発生原因」や「ノイズは臨床成績に影響を与えるのか?」という観点から、田園都市レディースクリニックにおけるPGT-データを解析し、発表してきました。

以下の図のように、PGT-Aの解析結果を見てみると、チャートの乱れ(ノイズ)がしばしば見られます(図1)。

ノイズ無

ノイズ無

ノイズ有

ノイズ無

(図1)

(図1)

ノイズの原因をはっきりと特定することは難しいのですが、「PGTの技術」「採取した細胞の保存状態」「輸送環境」などにより起こる可能性がある (Fragouli E et al.2019) と言われており、日本産科婦人科学会も同様の見解を示しています。

そこで、「①ノイズの発生原因は何なのか?」「②ノイズは妊娠に影響を与えるのか?」
この2つの項目について、私達は検討を行いました。

① ノイズの発生原因は何なのか?

ノイズの発生原因を探るために、培養に関係する以下の5項目について調べてみました。
・採卵時の妻年齢はノイズと関係する?
・胚培養日数(培養5日目、6日目)の違いはノイズと関係する?
・受精方法(IVF、ICSI)の違いによってノイズの出現は変わってくる?
・胚盤胞のグレードはノイズの出現に関与する?
・PGT-Aによって採取した細胞数―多く取り過ぎるとノイズが出やすい?

今回の結果では、「採卵時の妻年齢」「胚培養日数(培養5日目、6日目)」「受精方法(IVF、ICSI)」「胚盤胞のグレード」「採取した細胞数」とノイズの出現に相関は見られませんでした。

② ノイズは妊娠に影響を与えるのか?

PGT-Aの解析結果がA判定(正倍数性)と判断された胚に対して、ノイズの有無により移植成績に差はあるのか検討を行ってみました。
結果は

A判定(正倍数性)胚の凍結融解単一胚盤胞移植の臨床成績

平均年齢 臨床妊娠率(%) 流産率(%) 生産率(%)
ノイズ無 38.5 72.4% 11.9% 62.1%
ノイズ有 38.6 66.7% 12.5% 58.3%

ノイズ無とノイズ有の間に有意な差は確認できなかったことから、ノイズの有無が移植成績に与える影響は少ないことが示唆されました。

今回の結果からは、ノイズの原因を解明することはできませんでしたが、今後も引き続きさらなる検討を進めていきたいと考えています。

監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士

河村 寿宏 医師・医学博士

田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授

「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。

※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。