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採卵当日の2回目採精の精液所見と培養成績の検討
先日開催された第70回日本生殖医学会学術講演会にて「採卵当日の2回目採精の精液所見と培養成績の検討」という演題で当院から発表した内容についてご紹介いたします。
当院では体外受精を実施する患者さんの、採卵当日のパートナーの精液所見が普段より不良であった場合、c-IVF(精子を卵子にふりかける通常の体外受精)をご希望の患者様へ、2回目の採精をお願いする場合があります。禁欲日数は精液所見に影響することが知られています。WHOガイドラインでは2-7日の禁欲日数が推奨されております(WHO,2010)。一方で禁欲日数が短いことで培養成績や臨床成績が改善されたとういう報告もあります1)。そこで、今回は採卵当日の2回目採精がc-IVFの受精率や培養成績へ及ぼす影響について検討いたしました。結果は下記の通りとなります。
(以下A群:1回目採精群、B群:2回目採精群)

・精液量はA群で有意に多く、運動率はB群で有意に高くなりました。

・A群と比較しB群でDay5良好胚盤胞率が有意に高くなりました。

・両群間の培養成績を比較した際に使用した精液所見を比較しました。液量、精子濃度がA群で有意に多くなりました。
上記の培養成績の検討ではA群の妻年齢がB群と比較し有意に高くなりました。妻年齢の差が培養成績に影響している可能性が考えられたため、両群を39歳以下と40歳以上に分け、培養成績の比較を行いました。

・39歳以下の受精率と40歳以上の良好胚盤胞率がB群で有意に高くなりました。
以上の結果より、採卵当日に精液所見が不良であった場合、2回目採精することで精液所見が改善する可能性があること、受精率の低下や培養成績が改善する可能性があることが示されました。引き続きデータを蓄積して、エビデンスに基づいた治療を提供できるよう努めて参ります。
参考文献
1) Revisiting the impact of ejaculatory abstinence on semen quality and intracytoplasmic sperm injection outcomes: Andrology. 2019 Mar;7(2):213-219.
監修医師紹介
河村 寿宏 医師・医学博士
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。


