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当院における未受精卵凍結(卵子凍結)の融解後成績について
先日開催された第70回日本生殖医学会学術講演会にて「当院における未受精卵凍結融解ICSIを施行した症例に関する検討」という演題で当院から発表した内容についてご紹介いたします。
未受精卵凍結(卵子凍結)は医学的適応(抗ガン剤治療や放射線治療等に備えた妊孕性温存)のみならず、近年では社会的適応(現時点では妊娠を望まないものの将来に備えて卵子を凍結する)においても注目されている技術です。当院では以前より、体外受精(あるいは顕微授精)予定の採卵当日に精液採取できなかった、または採取された精液中に精子が確認できなかった場合等に緊急措置として未受精卵凍結を実施してきました。今回は2014年1月~2024年9月に未受精卵凍結を実施し、融解後にICSIを施行した10症例について検討いたしました。結果は下記の通りとなります。
検討1).採卵時妻平均年齢、採卵数、融解後生存率について検討しました。
- 採卵時妻平均年齢は40.8±5.1歳、平均採卵数5.7±3.3個、平均卵子凍結数4.2±3.5個、融解後の生存率は88.1%(37/42)でした。
検討2). ICSI時の精液所見が正常群(WHO基準を満たす:A群)と乏精子症群(B群)に分け、正常受精率、Day3良好胚率、Day5良好胚盤胞率、移植あたりの臨床妊娠率について検討しました。
A群、B群のICSI後の正常受精率(69.6%(16/23)、71.4%(10/14))、Day3良好胚率(31.3%(5/16)、60.0%(6/10))、Day5良好胚盤胞率(50.0%(7/14)、20.0%(2/10))、臨床妊娠率(75.0%(3/4)、0.0%(0/2))でした。臨床妊娠が確認された3症例のうち2症例が生産、1症例が妊娠継続中です。児に先天性異常は認めませんでした。
今回の検討より、採卵し体外受精(あるいは顕微授精)予定だったが、採卵当日に精子が確保できなかった場合の緊急措置として未受精卵凍結を実施することは有効であることが示されました。一方で、精液所見が不良な場合には培養成績が低下する可能性があるため、そのような症例で挙児を得るためには十分な卵子の確保が必要となることも示されました。
現在、当院では医学的適応の卵子凍結に加えて、社会的適応の卵子凍結も施行が可能となっております。まずは担当医にご相談ください。
引き続き知見に基づいた治療を提供できるように努めて参ります。
監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。