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2025.08.04 blog

Laser-Assisted Hatching後に孵化を認めない胚について

今回は、2025年4月27日・28日に東京国際フォーラムで行われました第70回日本生殖医学会学術講演会にて当院培養士が発表した演題についてお話します。

胚盤胞は拡張と収縮を繰り返して透明帯を薄くしハッチング、そして着床へとつながることがわかっています(Hammadeh et al.2011、Huang et al.2016他)。
当院ではPGTの際、事前にレーザーを用いて孵化補助(Laser-Assisted Hatching : L-AHA)を行い、ハッチングしてきた細胞の一部を採取し、解析を行っています(図1)。
しかし、一部の胚で拡張と収縮を繰り返すがハッチングしてこないものが散見されました(図2)。

(図1)

 

(図2)

胚盤胞の質が悪いほど、自発的な収縮の回数が多くなり、時間が長くなり、胚盤胞の自発的な収縮の回数と正倍数性率とは負の相関があり、回数が多くなるほど正倍数性率は低くなる(Danlio Cimadomo et al.2022)といった報告がされています。

そこで今回、L-AHA~細胞採取までの間に、一度でもhatchingが起きた群(H群)と一度もhatchingしてこなかった群(NH群)を、ガードナー分類「3(完全胚盤胞)」と「4(拡張胚盤胞)」に分けてPGT-Aの解析結果について比較検討を行いました。

ガードナー分類「3」の結果は
H群とNH群のPGT-Aの解析結果は、正倍数性胚率15.3%(17/111) vs 0%(0/26)、異数性胚率73.9%(82/111) vs 69.2%(18/26)、モザイク胚率10.8%(12/111) vs 26.9%(7/26)とH群がNH群と比較して正倍数性胚率が有意に高くなり、モザイク胚率が有意に低くなりました。また、年齢間に有意差は見られませんでした(図3)。

(図3)

ガードナー分類「4」の結果は
H群とNH群のPGT-Aの解析結果は、正倍数性胚率は15.7%(11/70) vs 23.1%(3/13)、異数性胚率55.7%(39/70) vs 61.5%(8/13)、モザイク胚率27.1%(19/70) vs 15.4%(2/13)と両群に有意な差は見られませんでした。また、年齢間においても有意差は見られませんでした(図4)。

(図4)

今回の結果から、完全胚盤胞に達したとしても、L-AHA後に一度も孵化(Hatching)を認めない胚は正倍数性で無い可能性が高いことが示唆されました。さらに症例を増やして検討行いたいと思います。

監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士

河村 寿宏 医師・医学博士

田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授

「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。

※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。