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公費による子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)キャッチアップ接種について
子宮頸がんは、30代後半~40代でがんになる可能性が最も高く、最近では20代でも子宮頸がんやその前段階の上皮内がんの診断を受ける方が増えています。国立がん研究センターの統計によると、20~30代の日本女性における子宮頸がんは、2000年ころまでは人口10万人あたりで20人前後だったのですが、その後急増し、2011年には100人以上となっています。
日本では年間約2900人が子宮頸がんで亡くなっており、定期的な検診と予防が非常に大切です。
妊娠のためには、当然ではありますが、子宮の存在は必須であり、子宮頸がんは定期的に検診をしていれば、がんの前段階で見つけられたり、進行したがんになる前の段階で発見できることも多くあります。高度異形成や、上皮内がんと呼ばれる初期がんの段階で発見できれば、子宮頚部の一部を切除するだけで子宮を残すことができ、妊娠・出産も可能です。
当院でも不妊症で受診された方で定期的検診を受けられていない方には、子宮頸がん検診をお勧めしています。
子宮頸がんは、その原因のほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)への感染によると言われています。HPVに感染する原因は、主には性交渉です。HPVはごくありふれたウイルスで、男女ともに存在し、多くの女性が一生に一度は感染する、と言われています。ただし、感染しても必ずしもがんになるわけではありません。
HPVは子宮頸がんだけでなく、外陰がん、腟がん、また男女問わず、肛門がん、咽頭がん等の原因にもなります。
HPVワクチンが子宮頸がん予防に有効であることが分かってから、日本でも国が主導して一時は約8割の女子(小学校6年生~高校1年生)が接種していました。ところが、副反応の問題が取り沙汰されてHPVワクチン接種の積極的勧奨が中止となり、ほとんど接種されなくなっていました。しかしながら、その後この副反応とHPVワクチンの因果関係がほぼ否定され、HPVワクチンの効果と安全性が改めて確認されたことから、2022年4月より、積極的勧奨が再開されました(当院でも昨年から院内に掲示してご案内しております)。
HPVワクチンの接種がほとんど空白となってしまっていた、平成9年~19年度生まれの女性に対して、HPVワクチンを無料で接種(全3回)できる、キャッチアップ接種が開始されています。
当初はこのキャッチアップ接種が、2024年9月までに打ち始めれば、全3回のHPVワクチンが公費(無料)となっていたのですが、2024年夏以降に大幅な需要増加があり、ワクチンの十分な供給が出来ず、HPVワクチン接種を希望しても受けられなかった方が多数出てしまいました。このため、公費でHPVワクチンを受けられる期間が延長され、2025 年3月31日までにHPVワクチンを1回以上接種した方は 2025年4月以降も残りの接種を公費で受けられることになりました。公 費 での 接 種 期 間 は2026年3月31日までです。
横浜市在住の方で、公費によるHPVワクチン接種をご希望の方は、当院あざみ野本院で接種が可能ですので、医師又は看護師、受付にお申し出ください。
監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。