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胚盤胞に見られる遺残割球、fragmentation、空胞とPGT-Aの解析結果の関連について
2020年から2023年に当院でPGT-Aを施行した925個の胚盤胞について解析しました。これらの胚盤胞は形態的評価では、いずれも良好胚とされるもので、胚盤胞のGardner分類で3BB以上の胚を対象としています。
検討1.)遺残割球、fragmentation、空胞が全く無い群(Good:G群)、遺残割球、fragmentation、空胞のいずれか1つが確認された群(Fair1:F1群)、2つ以上確認された群(Fair2:F2群)についてPGT-Aの判定結果を年齢別(39歳以下、40歳以上)に比較しました。検討2.)検討1.の結果を踏まえて各群のグレードと臨床成績を検討しました。PGT-Aの判定はA~Dに分類し、A:正倍数性胚、B:モザイク胚、C:異数性胚、D:判定不能、としました。
結果は下記の通りとなります。
検討1) 39歳以下

F2 : fragmentation、空胞、遺残割球が2つ以上確認された
検討1) 40歳以上

F2 : fragmentation、空胞、遺残割球がいずれか2つ以上確認された
・F2群はG群、F1群と比較してA判定率が有意に低くなり、C判定率が有意に高くなりました。
検討2. 各群のグレード比率

F2 : fragmentation、空胞、遺残割球が2つ以上確認された
・G群、F1群、F2群の順に低グレード胚の割合が大きくなりました。
検討2. 臨床成績

F2 : fragmentation、空胞、遺残割球が2つ以上確認された
・A判定胚(正倍数性胚)の凍結融解単一胚移植の臨床成績はG群とF1群間で有意差はありませんでした。また、F2群で得られた正倍数性胚は1件移植をして生産に至りました。
以上より、低グレード胚ほど遺残割球、fragmentation、空胞が確認されやすく、同一グレードであれば遺残割球、fragmentation、空胞がいずれか2つ以上観察された胚盤胞は異数性胚の可能性が高くなることが示唆されました。しかしながらPGT-A解析の結果、正倍数性胚であれば遺残割球、fragmentation、空胞の有無は臨床成績に与える影響は低いことが示唆されました。このことから通常顕微鏡で観察できる見た目の胚とPGT-A解析の結果は必ずしも一致しないこがわかりました。
引き続きエビデンスに基づいた治療を提供できるよう努めて参ります。
監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。