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2022年に生まれた児のおよそ10人に1人は体外受精による妊娠
2022年に実施された体外受精等の生殖補助医療により生まれた児が、前年に比べて7千人以上増加し、過去最多の7万7206人であったとの調査結果を日本産科婦人科学会が2024年8月30日に公表しました。2022年に日本で生まれた赤ちゃんのうち、およそ10人に1人が体外受精により妊娠したものであることになります。
2021年に比べて、2022年の体外受精による出生児が約1割増加したのは、2022年4月から体外受精が保険適用になったことが最大の理由として考えらえます。
保険適用前も、助成金制度はあったのですが、保険適用によって、平均すればそれまでよりも一層、個人の費用負担が軽減したと考えられます。
また、年間の治療件数も54万件以上となり、前年よりも1割以上増加しています。保険適用となることで、体外受精が一般により周知され、治療を受けるハードルも下がってきたと考えられます。
体外受精の保険適用には年齢制限が設けられ、43歳未満の女性が対象となります。42歳までは体外受精を保険で実施出来ますが、43歳以上になると全額自己負担となってしまうため、2022年の体外受精の年齢別治療件数は、保険での治療ができるギリギリの42歳の方がもっとも増加しました。
下のグラフは、日本産科婦人科学会が2024年8月30日に公表した年別の体外受精による出生児数です。
2000年代に入ってから、毎年体外受精による出生児は増加し続けました。2019年から2020年はほぼ横ばいでしたが、2021年は前年を大きく上回っています。これは、それまでは助成金の所得制限があったのが、撤廃されて、所得に関らず体外受精を助成金制度を使ってできるようになったことが、大きく影響したものと思われます。
そして、前述のごとく、2022年には体外受精が保険適用となり、さらに一層出生児が増加したことになります。
FET出生児:凍結胚から生まれた児。
ICSI出生児:顕微授精を実施し新鮮胚移植で生まれた児。
IVF出生児:体外受精を実施し新鮮胚移植で生まれた児。
また、このグラフから、現在日本で生殖補助医療により生まれてきている児のうち約94%が凍結した胚を移植し妊娠していることが分かります。
これまで日本で体外受精により生まれた赤ちゃんの累計は、91万8千人以上となり、もうすぐ100万人に到達します。
さらに、今回の日本産科婦人科学会からの発表で、日本で生まれる赤ちゃんの約10人に1人は体外受精によるものとなり、現在深刻化している日本の少子化に対して、体外受精をはじめとする不妊治療は、その対策に大きく貢献していると言えると思います。
監修医師紹介

河村 寿宏 医師・医学博士
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。