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2024.05.20 blog

PGT-Aの解析結果と胚盤胞の培養日数および年齢別グレードの関連性の検討

第41回日本受精着床学会にて「PGT-Aの解析結果と胚盤胞の培養日数および年齢別グレードの関連性の検討」という演題で当院から発表した内容についてご紹介いたします。

PGT-Aは胚盤胞のTE細胞を数個採取し、胚の染色体異常の有無を確認後、正常と判定された胚を移植することで妊娠率の上昇が期待されている技術であり、当院は2020年に開始された日本産婦人科学会PGT-A特別臨床研究の研究分担施設として承認され、適応を満たした患者様を対象にPGT-Aを実施してきました。

今回の検討では2020年~2022年に特別臨床研究の指針の下、PGT-Aを施行した150症例320周期919個の良好胚盤胞(Gardner分類3BB以上)を対象として、PGT-Aの解析結果(A、B、C判定)と培養日数(Day5 vs Day6)および胚盤胞のグレード(AA、BA、AB、BB)の関連性について年齢別(35歳以下、36-39歳、40歳以上)に比較しました。

結果は下記の通りとなります。

  • Day5胚がDay6胚と比較してA判定率が有意に高く、C判定率が有意に低くなりました。
  • 35歳以下では胚のグレードと解析結果に有意差は認められませんでした。
  • 36-39歳、40歳以上ではAA胚がAB、BB胚と比較してA判定率が有意に高く、C判定率が有意に低くなりました。さらに、40歳以上ではBA胚もAB、BB胚と比較してA判定率が有意に高く、C判定率が有意に低くなりました。

以上のことから、良好胚盤胞への到達速度およびグレードとPGT-Aの解析結果は関連性があること、また年齢が上昇するにつれて、グレードがよりPGT-Aの解析結果に影響を与えることが示されました。

現在、ARTにおいて胚盤胞を評価する場合、一般的にはPGT-AではなくGardner分類による形態的評価が用いられています。当院ではこのGardner分類を用いて「凍結融解単一胚盤胞移植における胚のグレードと妊娠成績および妊娠予後の年齢別比較・検討」という題で臨床報告をしています(日本受精着床学会雑誌 34(1):135-142, 2017)。この論文により臨床妊娠率に与える影響は胚盤胞の拡張度やTEのグレードがICMのグレードよりも大きい、つまりBA胚がAB、BB胚と比較して臨床妊娠率が高く、さらに年齢の上昇とともにその影響が大きくなることがわかり、当院の凍結胚選定基準の一つとなっています。

今回の結果はこの論文の結果と一致するものであり、形態的評価の重要性が改めて示されました。

引き続き患者様にエビデンスに基づいた治療を提供できるよう、努めて参ります。