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BMIと体外受精の成績について
BMIが体外受精の成績に影響するかどうかについて、当院から発表した論文を紹介させていただきます。
Maternal body mass index is not associated with assisted reproductive technology outcomes
Scientifc Reports (2023) 13:14817
2016年1月から2020年12月までに当院で行われた14,605回の採卵周期について、採卵前のBMIを(<18.5、18.5-20.0、20.0-22.5、22.5-25.0、≧25kg/m2)の5群に分け、正常受精率と良好胚盤胞率を比較しました。さらに、良好胚盤胞を用いた7,122例の凍結胚盤胞移植において、5つのBMI群における臨床妊娠率、流産率、生児出生率を検討しました。
その結果、正常受精率と良好胚盤胞率に関する重回帰分析では、統計的に有意な差は認められませんでした。さらに、凍結胚盤胞移植において、各BMI群間で、臨床的妊娠率、流産率、生児出生率に有意差は認められませんでした。BMIは妊娠中の合併症の危険因子ですが、ARTの結果には影響しないと考えられます。したがって、肥満のある女性には不妊治療開始時に体重指導を行うべきではありますが、体外受精の採卵を遅らせるべきではないと考えます。
少しでも体外受精において良好な成績を出すためには、加齢に伴う卵子の老化、染色体異常率の上昇を考慮しながら、なるべく若い時に卵子を採卵する必要があります。一方で、母児の妊娠中・分娩時の合併症を最小限に抑える必要もあります。このため、肥満女性の場合には減量をしつつ、若いうちに採卵を実施し一旦凍結保存し、妊娠した場合の母児のリスクを最小限にすべく減量が出来た後に、凍結胚を移植する、という方法が望ましいと考えています。