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2021.09.13 blog

ORP検査とは?

不妊の原因には、男性に原因があるもの、女性に原因があるもの、両者に原因があるものがあり、不妊の約半数は男性側が関与していると言われています。男性不妊の基本検査としては、古くから精液検査が取り入れられており、精液量、精子濃度、精子運動率、正常形態率を中心とした指標に焦点が当てられてきましたが、近年では、“精子の酸化ストレス”が精子の質の新たな指標として注目されています。そこで今回は、当院で導入しているORP(Oxidation-Reduction Potential)検査についてご紹介をさせていただきます。

私たちの体では、呼吸によって酸素を取り込み、食事で摂った栄養素を燃やしてエネルギーを作り出しています。この過程の中で、酸素の一部が変化し“活性酸素”となります。活性酸素は自身の酸化力により、体内に侵入した細菌やウイルスの攻撃から体を守ってくれる大切な物質です。通常であれば、この活性酸素の働きは“抗酸化機能”(不要な活性酸素を除去するシステム)により制御され、体内の“酸化”と“抗酸化”のバランスが適切に保たれています。しかし、過剰な活性酸素の生成、または、抗酸化機能の低下により、バランスが酸化側に大きく傾いてしまうと、“酸化ストレス状態”となり、様々な細胞を傷つけてしまいます。そしてこの影響は、生殖細胞である卵子や精子にとっても例外ではありません。

特に精子は、酸化ストレスを受けやすい構造をしていることに加え、備わっている抗酸化機能も低いため、酸化ストレスに対して非常に脆弱な細胞であることが知られています。そして、精子へ強い酸化ストレスがかかった場合、精子は大きな損傷を受け、受精率や妊娠率の低下、流産率の上昇につながることが報告されています。そのため、精子の外的環境である精液中の酸化ストレスの程度を測定し、これが高い場合は、生活習慣の改善や抗酸化剤の内服、抗酸化サプリメントの摂取、あるいは精索静脈瘤がある場合には必要に応じて手術を行い、精液の状態を改善させつつ治療に臨むことが、重要であると考えられます。

ORP検査は、精液中の酸化と抗酸化のバランスを総合的に評価する検査であり、酸化力、または、抗酸化力のみを評価する検査に比べ、より高い精度で精液中の酸化ストレスの程度を知ることができます。当院でも、ORPを指標とした酸化ストレスの程度を測定できる機器を導入しており、精液所見が不良の方を中心にご希望の方にこの検査を実施し、その結果に基づいて治療を行い、精液所見が改善する方が数多く見られます。

従来の精液検査に加え、本検査を行うことで、男性側の隠れたリスク因子を特定できる可能性があります。本検査をご希望の方は担当医にご相談ください。