ブログ Clinic Blog

2021.04.29 blog

採卵当日にMⅠからMⅡへ成熟した卵子の培養成績および臨床成績 

顕微授精をする卵子は、採卵後に卵子を包んでいる卵丘細胞を除去し、成熟卵(MⅡ卵)であったものに対して、顕微授精を実施します。一方で、未熟卵(MI卵)のままでは顕微授精は出来ず、そのまま培養を継続し、数時間後に成熟した卵子に顕微授精を行う場合があります。このような場合の培養成績、臨床成績について、当院から欧州生殖医学会(ESHRE)で発表し、Journal of Mammalian Ova Researchに掲載された当院の論文をご紹介いたします。(Vol.36(2),115-119,2019 )

 

採卵当日MIからMIIへ成熟した卵子を用いた5976周期の顕微授精を実施した培養成績および臨床成績を、通常の成熟卵を対象として比較検討しました。

培養成績は、受精率、day3良好胚率、day5良好胚盤胞発生率の各項目においてMI→MII群で有意に低い成績でした(図1)。一方、臨床成績は凍結融解胚盤胞移植に至った症例で臨床妊娠率、生産率、流産率の検討を行いましたが、各項目において両群に有意差はありませんでした(図2)。

このことから、卵丘細胞除去時MIであり数時間後にMIIとなる卵子は、良好胚盤胞へ発生すれば通常のICSIと同等の臨床成績を得られることが示唆されました。

図1 培養成績の検討

図2 臨床成績の検討