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2021.03.31 blog

0PNおよび1PN由来凍結融解単一胚盤胞移植における臨床成績の検討

体外受精では、採卵翌日に正常受精したかどうかを前核の観察で行います。正常に受精している場合は、通常は二つの前核(2PN)が確認されますが、前核が確認できない(0PN)や1個しか確認できない(1PN)ことが時にあります。移植の際は2PNが確認出来た胚を優先しますが、2PNがなく、0PN、1PNしかない場合には、患者さんと相談の上、移植をする場合があります。これらの成績について、当院から欧州生殖医学会(ESHRE)で発表し、Reproductive Medicine and Biologyに掲載された当院の論文をご紹介いたします。(Reprod Med Biol . 2019 May 15;18(3):278-283. )

体外受精による成績は、下のグラフのように、臨床妊娠率および生産率で2PNと0PNの間に有意差が認めらましたが、1PNは、2PNに比して妊娠率および生産率が低い傾向があるものの、有意差はありませんでした。

一方で、顕微授精での成績は、下のグラフのように、0PN由来胚は、2PNと妊娠率、生産率、流産率ともに有意差はなかったものの、1PN由来胚の妊娠成績は非常に低値でした。

1PN、0PNの臨床成績は受精方法によって差はあるものの生児が得られており、今回検討した中では先天異常は認められておりません。さらに、IVFを施行した1PNとICSIを施行した0PNは2PNと同等の臨床成績があり、2PNがなく、今後も2PNを得るのが困難な患者さんにおいてそれらを移植することで妊娠の機会を増やすことが出来るかもしれません。
しかしながら、1PN、0PNを移植することが少ないため、限られた症例数をもとにした結果であり、その安全性が十分確保されたとはいえません。特にICSIを施行した1PNを移植の対象とするかは更なる検討が必要です。