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2021.01.29 blog

凍結融解精子および新鮮精子を用いたICSIにおける精子運動率別の受精・培養成績の比較検討

当院から過去に学会で発表した内容や、論文についていくつかご紹介していきたいと思います。

今回は、2019年8月に開催された日本受精着床学会にて、「凍結融解精子および新鮮精子を用いたICSIにおける精子運動率別の受精・培養成績の比較検討」という演題で、当院から発表した内容です。

採卵当日に男性の出張等で新鮮精子の確保が困難な場合や、元々精液所見が非常に悪い場合などには、採卵前にあらかじめ精子の凍結保存を行うことがあります。このような場合、顕微授精において、凍結精子と採卵日当日の新鮮精子とで、受精率やその後の胚発生に差があるかどうかを調べました。

原精子の運動率を、10%未満、10~20%未満、20~30%未満、30%以上、の4群にわけて、運動率別に比較をしました。

結果ですが、正常受精率は、凍結精子と新鮮精子で、各群間で有意差はありませんでした。採卵2日目の分割率も、凍結精子と新鮮精子で、各群間で有意差はありませんでした。

分割後の胚の発育ですが、採卵5日目での胚盤胞到達率、良好胚盤胞発生率は精子運動率が10%未満の群では、凍結精子が新鮮精子に比べて、有意に低値でしたが、精子運動率が10%以上の群では、凍結精子と新鮮精子で、各群間で有意差はありませんでした。

採卵6日目の胚盤胞到達率では、凍結精子と新鮮精子で、各群間で有意差はありませんでした。

まとめると、凍結融解精子を使用したICSIにおける正常受精率は、原精液の運動率にかかわらず、新鮮精子を使用した場合と変わらないことがわかりました。

一方で、精子運動率が10%未満では、採卵6日目では有意ではないものの、採卵5日目での胚盤胞発生能の低下が起こりえるので、可能であれば新鮮精子を用いることが望ましく、精子運動率が10%以上においては、凍結融解精子は新鮮精子を用いたものと同等の胚盤胞発生能を示し、培養成績に大きな影響を与えないことがわかりました。

[結果]正常受精率[結果]day2分割率

[結果]day5胚盤胞到達率

[結果]day6最終胚盤胞到達率