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2020.12.21 blog

生殖バイオロジー東京シンポジウム 『 PRP(platelet rich plasma)による難治性不妊の治療 』

当院が主催させていただいた生殖バイオロジー東京シンポジウムでご講演いただいた先生方のご講演の中で、一般の方にもわかりやすい臨床的な演題をピックアップしていくつかご紹介させていただいております。

今回は「PRP(platelet rich plasma)による難治性不妊の治療」という演題でご講演いただきました

山王病院院長で山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター長、国際医療福祉大学大学院生殖補助医療胚培養分野教授であられる堤治先生のご講演をご紹介させていただきます。

PRP(多血小板血漿)は自身の血液中の血小板に含まれる成長因子を体に戻し、ケガや病気の治療を促す再生医療の一つです。

有名なケースでは、大リーグの大谷翔平選手、田中将大選手らが、肘の故障を治すためにこのPRP治療を受けています。

子宮内膜機能の低下や子宮内膜が薄い状態に対しては、これまで有効な治療手段が乏しく、難治性不妊の要因と考えられていますが、
堤先生らはこの状態に対するPRP療法の臨床研究に取り組まれております。

臨床研究では、「菲薄化した子宮内膜に対する多血小板血漿(PRP)を用いた不妊治療研究」のテーマのもとに、子宮内膜が7㎜以下で難治性着床不全の患者さんに、胚移植前に子宮内にPRPを投与しました。患者さんのうち、83%には過去に子宮の手術や子宮動脈塞栓術の既往がありました。このことからも子宮内膜が薄くなる場合には、これらの手術が影響している場合が多いことがわかります。PRP投与により子宮内膜は平均1.27㎜有意に厚くなりました。また18.8%が妊娠反応陽性となり出産に至った方もいらっしゃいました。特に副作用はありませんでした。

この臨床研究で子宮内膜が薄く反復して着床しなかった方に対して、子宮内膜が厚くなるだけでなく、着床しやすくなることがわかったため、実際の治療に着手されました。

この治療では、子宮内膜が薄い方だけでなく、反復して着床しなかった方も対象に加わりました。平均年齢40.6歳の患者さんにPRPを投与したところ、子宮内膜は平均6.0㎜から7.5㎜と、有意に厚くなり、22.5%が妊娠されました。また、子宮内膜が厚くならなかった方でも妊娠された方がいらっしゃいました。PRPは子宮内膜が薄い方だけでなく、反復して着床しない方に対しても有効である可能性が示唆されました。