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2020.12.09 blog

生殖バイオロジー東京シンポジウム 『 子宮内膜着床能検査の臨床成績と課題 』

当院が主催させていただいた生殖バイオロジー東京シンポジウムでご講演いただいた先生方のご講演の中で、一般の方にもわかりやすい臨床的な演題をピックアップしていくつかご紹介させていただいております。

今回は「子宮内膜着床能検査の臨床成績と課題」という演題でご講演いただきました

亀田IVFクリニック幕張の川井清考先生のご講演をご紹介させていただきます。

 

胚が子宮に着床できる期間は限られており、この時期を着床の窓(window of implantation : WOI)と呼んでいます。近年、次世代シークエンサーを用いて、子宮内膜組織より抽出したRNAから着床に関連する遺伝子を解析し、着床の窓とのずれが無いかどうかを調べる、子宮内膜着床能(endometrial receptivity analysis : ERA)検査が体外受精の施設で実施されています。

ERA検査では、黄体ホルモンの補充開始後の胚盤胞の着床時期を、受容期(Receptive)、非受容期(Non-Receptive)に分けて判定します。凍結した胚盤胞をERA検査の結果を元に最適時期に融解胚移植する(personalized ET:pET)

により移植成績が改善することが多数報告されています。

亀田IVFクリニック幕張でERA検査を実施した結果、Non-Receptiveが約23%に認められました。

胚移植が反復して不成功だった患者さんに対して、ERA検査を行った場合の妊娠率は46.3%であったのに対して、行わなかった場合では、29.7%であったことから、ERA検査を実施することで妊娠率が向上すると考えられました。

一方で、ERA検査は結果判定に3週間程度必要なことにより、胚移植が2か月近く遅れてしまうことや、検査費用も高額であることから、費用対効果や妊娠までの期間を含めて、ERA検査を実施する場合、いつ行うかは検討の余地がある、と述べています。