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2020.10.26 blog

生殖バイオロジー東京シンポジウム 『 アンチエイジング 』

前回から、当院が主催させていただいた生殖バイオロジー東京シンポジウムでご講演いただいた先生方のご講演の中で、一般の方にもわかりやすい臨床的な演題をピックアップしていくつかご紹介させていただいております。

今回は教育講演でAGEとアンチエイジングについて、「アンチAGEでアンチエイジング」という演題でご講演いただきました昭和大学教授の山岸昌一先生のご講演をご紹介させていただきます。

 

加齢に伴い、体の中のタンパク質に糖がこびりついて、臓器を障害する終末糖化産物(advanced glycation end products: AGEs)と呼ばれる老化蛋白が形成されます。AGEs化したタンパク質は、機能が変化するだけでなく、細胞表面にくっつき炎症反応や酸化ストレスを起こして、心血管合併症や骨粗鬆症、アルツハイマー病、癌、など様々な老年病を引き起こします。

また、AGEsが蓄積すると、不妊症や更年期障害、老け顔の原因にもなることが明らかになってきました。

さらに最近では、食事に由来するAGEsが老年病の発症や悪化につながることも報告されています。ジャンクフードや、脂っぽい食べ物を揚げたり焼いたりして焦げ茶色になるとこの部分にAGEsが多いことが判っています。

食事で体内に取り込まれたAGEsは、腸内細菌にも弊害を与え、乳酸菌が減少し悪玉菌が増えてきます。

タバコの中にもAGEsが入っており、運動不足、精神的ストレス、睡眠不足、朝食抜き、甘い物・揚げ物・超加工食品の過食もAGEsの蓄積につながることが判ってきました。それが死亡リスクを上昇させることになります。

高温で揚げたり、焼いたりせず、水で煮炊きするような調理方法の工夫で食事由来のAGEsを抑えることにより、炎症・酸化ストレスレベルが下がり、血管内皮機能とメタボが改善し、長寿遺伝子が活性化します。また、ネズミではAGEs摂取を減らすと寿命は延びるが、いくらカロリー制限をしてもAGEsを減らさないと寿命は延びないことが判ってきました。

産婦人科の病気の中では、妊娠中の合併症である妊娠高血圧症候群では、AGEsが上昇しており、AGEsは不育症にも関連すると報告されています。また、多嚢胞性卵巣症候群では、血中AGEsが上昇しており、卵胞の細胞にもAGEsが多いことが判っています。さらに、母体のAGEsが高いと新生児も高く、胎児奇形にも関わる可能性が指摘されています。

AGEsを抑えるための対策ですが、まず食事では、揚げ物、焼き物を避け、煮たりゆでたりしたスローフードを摂取し、ファーストフードや甘味料を控えることです。

また、早食い、まとめ食いを避け、ゆっくりとよく噛んで、野菜・繊維質のものから先に食べ、低GI食品(雑穀、玄米パンなど)を取り入れ、食後に運動する、活動を増やす(食後ゴロンと横にならない)ことで、食後の血糖値上昇を抑えることが大切です。

食事に由来するAGEsを吸着してくれたり、体内でのAGEsの生成を抑えてくれる素材として、キチン・キトサン(まいたけ、桜エビ)、食物繊維(きのこ、セロリ)、純炭(セルロース炭)、スフフォラファン(ブロッコリースプラウト)、ケルセチン(玉ねぎの皮)があります。

AGEsを抑えることで、アンチエイジングに繋がり、妊娠しやすい体づくりを心掛けることが大切です。