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2017.07.30 blog

ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)

前回に引き続きヨーロッパ生殖医学会で採択されましたポスター発表の2題目をご紹介させていただきます。

 

「1PN由来凍結融解胚盤胞移植における臨床成績の検討」

 

要約すると

体外受精、顕微授精をおこなうと、翌日に受精の確認を行います。その際、卵子由来の前核と精子由来の前核が二つ並んだ前核期胚が確認されれば、正常受精です(受精確認)。

ところが、受精確認時、前核が1つの1前核胚(1PN胚)が認められることがあります。

1PN胚は通常の受精過程とは異なる形態を示すことからその正常性が懸念されています。そのため、当院では、胚盤胞に達した1PN胚をインフォームドコンセントの上、凍結保存し、2PN胚がなく患者の希望があった場合のみ移植を行っています。

体外受精:2PN 2162症例4056周期と1PN39症例41周期

顕微授精:2PN 2438症例5324周期と1PN21症例22周期で

1PN由来凍結融解胚盤胞移植における臨床妊娠率、生産率および流産率を検討しました。

(当院では、原則的には2PN由来胚の移植をおこなっており、1PN由来胚を移植することはほとんどなく、全体の中のわずか0.7%のみです。)

凍結融解胚盤胞移植において1PN由来胚の妊娠成績は、

2PN由来胚比べてIVFでは有意差がなく、顕微授精では、優位に低いことがわかりました。

一方で、顕微授精を行った1PN由来胚凍結融解胚盤胞移植において、当院でも分娩例があり、児の異常は認められていません。

顕微授精を施行した1PN胚の分娩報告は少数であり、その正常性は今後さらなる検討が必要ですが、正常児が得られる可能性もあることがわかりました。

今後も顕微授精を行った1PN胚においては移植をするかどうか慎重に検討する必要があります。