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胚凍結の実際 ~大切な胚を安全に保存するために~
体外受精や顕微授精によって得られた受精卵(胚)は、良好な発育が確認された後に凍結保存を行うことがあります。
患者様からは、
“凍結しても胚は大丈夫なの?”
“胚はどのように保存されるの?”
といったご質問をいただくことがあります。
今回は、当院で行っている胚凍結についてご紹介します。
採卵後、患者様から卵をお預かりし体外受精・顕微授精をおこなった後に最大6日間培養していきます。
当院の基準では5日目または6日目に発育した胚盤胞のうち、原則的にガードナー分類4BB以上の良好胚盤胞を凍結保存の対象としています。
また、患者様のご希望や治療方針に応じて、凍結基準の変更や初期胚での凍結を行う場合もあります。
胚凍結の目的
胚を凍結する際には、細胞を傷つける原因となる氷の結晶ができないようにすることが重要です。そのため、凍結前に専用の凍結液を使用し、胚の中の水分を徐々に置き換えていきます。
当院では、ES液・VS1液・VS2液という3種類の凍結液を使用しています。
ES液はVS液よりも浸透圧が低く、最初にES液に入れることで浸透圧によるショックを防ぎます。VS1液とVS2液は同じ液で、胚の中がVS1液に置き換わったかを確認する目的でVS2液があります。

【画像:左 ES液/中央 VS1液/右 VS2液】
ES液での処理
まずES液に7~13分間、胚を浸漬します。ここでは浸透圧の差によって胚の中にある水が外に出ていき収縮します。その後、少し遅れてES液の凍結保護物質が胚の中に流入することで胚は元の大きさに回復していきます。ここで水が胚の中に残っていると凍結した際に氷の結晶ができ、細胞を傷つけてしまいます。

【画像:左:ES液に浸漬する前の胚 右:ES液に浸漬して水が外に出て収縮した胚】
このように収縮した胚が、元の大きさまで回復したと判断できたらVS1液に移動させます。
VS1液、VS2液での処理
胚が回復したことが確認できたらVS1液に30~60秒間浸漬します。ES液を除去するようにVS1液内にて胚を移動させ、液の置換を行います。
その後、VS2液に10~20秒浸漬します。ここではES液がVS液に置き換わったかを確認します。胚の周りを混ぜることで液をなじませ、胚が収縮していることを確認します。
液体窒素による急速冷却
収縮が確認できたら胚を凍結デバイスの先端に持っていきます。
胚がデバイスの上に乗ったことが確認出来たら、液体窒素の中に入れて急速に冷却します。
これで凍結の動作は完了です。これにより胚は長期間安全に保存できる状態となります。
今回は胚凍結についてお話させていただきました。
胚凍結では、胚を溶液に浸す時間や移動のタイミングが非常に重要です。
当院では培養士が顕微鏡下で胚の状態を細かく観察しながら、一つ一つの胚を丁寧に凍結保存しています。
患者様からお預かりした大切な胚を安全に保管できるよう、日々技術の向上と品質管理に努めています。
次回は、凍結した胚を移植前に元の状態へ戻す「胚融解」についてご紹介したいと思います。
監修医師紹介
河村 寿宏 産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医・指導医
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京科学大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
田園都市レディースクリニック[あざみ野本院]
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※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。


