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胚融解について
前回のブログでは、受精卵(胚)の凍結保存についてご紹介しました。
今回は、その大切に凍結保存した胚をどのように融解(解凍)し、胚移植まで進めているのかをご紹介します。
「凍らせた胚は本当に元の状態に戻るの?」
「移植の日にはどんなことをしているの?」
そのような疑問をお持ちの患者様も多いのではないでしょうか。
当院では、患者様の移植当日の朝から、一つずつ胚を丁寧に融解しています。
胚の融解に使用する融解液
当院では、以下の4種類の融解液を順番に使用します。
それぞれの融解液には異なる役割があり、胚にできるだけ負担をかけないよう、少しずつ体内の環境に近い状態へ戻していきます。

胚融解で最も大切なこと
凍結していた胚を融解するときに非常に重要なのは、素早く、適切な温度で加温することです。
胚は−196℃の液体窒素の中で保存されています。ガラス化凍結では、胚の中に大きな氷の結晶をつくらず、「ガラス」のような状態にして保存します。加温が適切に行われないと、その途中で氷の結晶が形成され、細胞を傷つけてしまう可能性があります。この最初の工程は、胚を安全に融解するためにとても重要な操作です。
TS(Thawing Solution)
まず最初に、胚を37℃に温めたTSへ移し、1分間静置します。
この工程では、−196℃で保存されていた胚を素早く加温します。急速に加温することで、先ほどお話しした氷晶形成を防いでいます。
DS(Dilution Solution)
次に、胚をDSに移し2分間静置します。
ここからは、凍結時に胚を保護していた凍結保護剤を少しずつ胚の外へ取り除いていく工程です。急激に液体を入れ替えてしまうと胚へ負担がかかるため、浸透圧が大きい液から浸漬することで液の置き換えが緩慢なスピードで行われ、胚へのダメージを最小限に抑えています。
WS1(Washing Solution 1)
続いて、胚をWS1に3分間静置します。ここでは浸透圧の大きいDSから浸透圧の小さいWS1に入れることで、胚の中にさらに水が流入し、凍結保護剤との置き換えが進みます。
正常に融解できている胚は、この段階で少しずつ元の状態へ回復していきます。
WS2(Washing Solution 2)
最後にWS2へ移し、胚を洗浄して通常の培養環境へ戻していきます。ここまでで融解操作は完了となります。
AHA(アシステッドハッチング)について
融解後は、当院では必要に応じてAHA(Assisted Hatching:アシステッドハッチング)を行います。
胚の周りには「透明帯」という薄い膜があります。胚は着床する前に、この透明帯を破って外へ出る(ハッチングする)必要があります。当院では、すでに大きくハッチングしている胚盤胞を除き、基本的にAHAを行っています。AHAとは、透明帯に切り込みを入れて胚のハッチングを助ける技術のことです。透明帯が硬くなると、胚がうまく透明帯から脱出できず、着床を阻害することがあります。
AHAには、
- 針(ニードル)を用いる方法
- レーザーを用いる方法
の2種類が一般的によく使用されています。
当院ではレーザーを用いることもありますが、主には針によるAHAを行っています。針によるAHAの映像がこちらです。(尺の都合上、2倍速にしております。)
動画のようにまず、透明帯の1/2程まで切れ目を入れます。次に胚を回転させて、最初に切った切り込みを確認しながら、同じく1/2ほど切れ目を入れます。このように十字に切り込みを入れます。
このように、融解後はAHAをすることで、胚がハッチングする手助けをしています。
AHAを終えた胚は、移植時間まで培養器(インキュベーター)の中で培養します。融解直後の胚盤胞は一時的に縮んだ状態になっていることもありますが、培養中にハッチングが始まる胚も多く見られます。

融解直後よりもさらに回復し、大きく広がっている様子をご覧いただけます。
安心して移植を迎えていただくために
当院では、患者様からお預かりした大切な胚を、一つずつ確認しながら丁寧に融解しています。また、AHAを行う際にも、胚を傷つけることがないよう細心の注意を払いながら操作を行っています。
培養士全員が安全で正確な操作を心がけ、日々技術の向上と品質管理に努めています。患者様からお預かりした大切な命の始まりとなる胚を、最良の状態で移植できるよう責任を持って管理しておりますので、どうぞ安心してお任せください。
監修医師紹介
河村 寿宏 産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医・指導医
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京科学大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
田園都市レディースクリニック[あざみ野本院]
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※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。


