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社会的卵子凍結について
卵子凍結を考える前に、一番大切なのは「知ること」
~未来の自分のために、今できること~
2026年、卵子凍結を取り巻く環境に新たな動きが生まれています。こども家庭庁が進める卵子凍結に関するモデル事業の一環として、神奈川県でも卵子凍結にかかる費用の一部を助成する制度の開始に向けた準備が進められています。当院にも事業に関する案内が届いておりますが、現時点では神奈川県のホームページに詳細は公表されておらず、正式な発表が待たれるところです。
この新たな取り組みは、卵子凍結を検討されている方にとって、経済的な負担を軽減する機会となるだけでなく、多くの女性がご自身の体や将来の妊娠・出産について考えるきっかけになるのではないでしょうか。
この機会に、少しだけご自身の未来について考えてみませんか。
これからどのような暮らしをしていきたいのか?その未来に子どもは?等々
今はまだはっきりした答えがなくても構いません。
仕事や結婚、家族との時間、そして自分自身の夢や目標。大切にしたいことは一人ひとり異なります。しかし、私たち生殖医療に携わる医療者として、ぜひ知っていただきたいことがあります。
それは、「人生を選ぶ権利はいつでもあるけれど、いつ選ぶかによって、希望がかなう可能性が変わることがある」ということです。
特に、妊娠・出産は女性の年齢と深く関係しています。
今回は、女性の年齢と妊娠の関係、そして将来の選択肢の一つである「卵子凍結」についてお話ししたいと思います。
妊娠・出産と年齢の関係を知っていますか?
女性の卵子は、生まれる前にその大部分が作られ、その後、新たに作られることは基本的にありません。
卵子の数は年齢とともに減少し、卵子の質も変化していきます。
特に30歳代後半以降は、妊娠しやすさの低下がより顕著になり、流産の可能性も高くなることが知られています。
また、妊娠中の合併症や出産に伴うリスクも、年齢とともに高くなる傾向があります。
「生理が毎月来ているから、まだ妊娠できるはず」
「健康には自信があるし、見た目も若いから大丈夫」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、月経が規則的に来ているからといって、必ずしも妊娠しやすいとは限りません。
健康的な生活を送っていても、卵子の加齢そのものを止めることは難しいのです。
だからこそ、妊娠・出産について考える際には、年齢による体の変化を正しく理解しておくことが大切です。
「もっと早く知っていれば」という言葉
私たちは日々の不妊治療の診療の中で、さまざまな患者様とお会いします。
その中で、時折耳にする言葉があります。
「こんな未来が来るなんて思っていませんでした」
「もっと早く知っていたら、違う選択をしていたかもしれません」
仕事を頑張ってきた方、パートナーとの出会いを待っていた方、さまざまな事情から妊娠・出産を先送りにしてきた方。
お一人おひとりにこれまで歩んでこられた大切な時間があります。ただ、もし妊娠と年齢の関係について、もっと早い段階で正しい情報を得られる機会があったなら、将来について考える選択肢が増えていたかもしれません。
私たちは、そのような患者様の言葉に接するたびに、妊娠を希望するようになってからだけではなく、若い世代に正しい知識を届けることの大切さを感じています。
将来の選択肢の一つ「卵子凍結」
近年、将来の妊娠に備える方法として「卵子凍結」が注目されています。
卵子凍結とは、現在の年齢で採取した卵子を凍結保存し、将来、妊娠を希望した際に使用することを目指す医療技術です。
卵子は年齢とともに質が変化するため、比較的若い時期に卵子を凍結しておくことには、将来の妊娠の可能性を残すという意義があります。
ただし、卵子凍結をすれば必ず妊娠できるわけではありません。
凍結した卵子を融解しても、すべてが生存するわけではなく、その後の受精や胚の発育、妊娠、出産に至るまでには、いくつもの段階があります。また、採卵に伴う身体的負担や費用、将来妊娠する際の年齢によるリスクについても理解する必要があります。
卵子凍結は、将来の妊娠を保証するものではありません。しかし、将来の選択肢を広げる可能性のある医療技術の一つです。大切なことは、卵子凍結をすること自体ではなく、そのメリットと限界を十分に理解したうえで、ご自身にとって必要かどうかを考えることです。
神奈川県でも卵子凍結に関する新たな支援の動き
2026年度、こども家庭庁は、卵子凍結に関する正しい知識の普及と、妊孕性温存に関する課題を検証するため、都道府県を通じた新たなモデル事業を進めています。
妊孕性とは、妊娠するために必要な能力のことです。
この事業では、卵子凍結について十分な情報を得たうえで、ご自身の意思で選択できるよう支援するとともに、卵子凍結や将来の生殖補助医療に関するデータを収集し、その有用性や課題について検討していくことが目的とされています。
神奈川県でも、このモデル事業の開始に向けた準備が進められています。
現時点では、助成の対象となる方の条件や助成額、申請方法、対象となる医療機関など、制度の詳細は正式に公表されていません。そのため、助成を受けられるかどうかについては、今後発表される条件を確認する必要があります。
神奈川県から制度の詳細が正式に公表されましたら、当院のホームページなどでも改めてご案内いたします。
このような取り組みが、卵子凍結を検討している方だけでなく、多くの女性がご自身の体や将来の妊娠・出産について考えるきっかけになることを期待しております。
一番大切なのは、正しい知識を持つこと
近年、「SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights:性と生殖に関する健康と権利)」という考え方が広がっています。これは、妊娠・出産を含む自分自身の体や人生について、正しい情報を得て、自らの意思で選択する権利を大切にする考え方です。
子どもを持つ人生も、持たない人生も、どちらも尊重されるべきものです。
卵子凍結を選ぶことも、選ばないことも、ご自身で決めてよいのです。
しかし、その選択をするときに、十分な情報を知らなかったために、後から後悔することはできるだけ避けていただきたいと考えています。
正しい知識は、人生の選択を支える羅針盤です。
今すぐ妊娠を希望していなくても、今すぐ卵子凍結を考えていなくても構いません。
まずは、ご自身の体について知ること。
そして、将来どのような人生を歩みたいのか、少しだけ考えてみること。
それが、未来の自分のためにできる大切な第一歩ではないでしょうか。
あなたらしい未来のために
一人ひとりが思い描く未来は異なります。その未来に向けて、どのような選択をするかも一人ひとり異なります。大切なのは、正しい知識を持ち、ご自身で納得して選択することです。
その第一歩として、まずは卵子凍結について知ることから始めてみませんか。
当院では、卵子凍結について正しく理解していただくため、毎月「卵子凍結セミナー」を開催しています。
卵子凍結の方法やメリット、限界について分かりやすくご説明するとともに、神奈川県の卵子凍結助成事業についても、現時点でお伝えできる情報をご案内いたします。
卵子凍結をするかどうか、まだ決めていない方も、どうぞお気軽にご参加ください。
「もっと早く知っていればよかった」ではなく、「知っていたから、自分で選ぶことができた」。
一人でも多くの女性に、そう感じていただけることを願っています。
私たち田園都市レディースクリニックは、すべての女性がご自身の未来について納得のいく選択ができるよう、これからも正しい医学的知識を届け続けてまいります。
また、卵子凍結や将来の妊娠・出産について、個別に相談したいことがありましたら、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
監修医師紹介
河村 寿宏 産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医・指導医
田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京科学大学医学部臨床教授
「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。
田園都市レディースクリニック[あざみ野本院]
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※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。


