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2026.07.06 blog

受精卵を育てる大切な環境 ― 当院のインキュベーターについて

今回は、体外受精においてとても重要な設備のひとつである「インキュベーター」についてご紹介します。
体外受精では、採卵した卵子と精子を受精させ、その後数日間にわたり受精卵(胚)を培養します。本来、胚はお母さんの体の中、卵管や子宮という非常に安定した環境で育っていきます。しかし体外受精では、その大切な時期を体の外で過ごさなければなりません。
そこで重要になるのが「インキュベーター」です。

インキュベーターとは?

インキュベーターは、体外受精において、卵管内、子宮内の環境をできる限り再現し、受精卵を体外で育てることができる環境を作るために必要不可欠な培養装置です。胚が健やかに発育するために、受精やその後の発生に重要な卵管内や子宮内の環境を模して、温度、二酸化炭素濃度、酸素濃度、湿度などが適切に保たれています。
わずかな環境変化でも胚に影響を与える可能性があり、培養室ではこれらを厳密に管理するために、培養士が毎朝すべてのインキュベーターのガス濃度を測定しています。

当院では株式会社アステック製のインキュベーターを導入し、合計25台を運用しています。
CCM-iBIS-L_W10(タイムラプスインキュベーター)11台
APM-30DR(培養用インキュベーター)13台
SMA-80DR(精子用インキュベーター)1台
年間およそ3000件の採卵が十分にまかなえる台数を設置しています。また、複数台を運用することで、万が一、どれか一台にトラブルが発生した場合でも迅速な対応が可能となり、患者様からお預かりした大切な胚を安全に管理しています。

また、インキュベーターの種類によりそれぞれ役割が異なり、胚の状態や培養の段階に応じて最適な環境を選択しています。

タイムラプスインキュベーター CCM-iBIS-L_W10

当院の培養室でメインとなるインキュベーターです。
胚の培養は、原則的に全てこのタイムラプスインキュベーターで培養しています。

タイムラプスインキュベーター CCM-iBIS-L_W10

この装置の大きな特徴は、胚を取り出すことなく成長の様子を連続的に観察できることです。
従来の観察方法では、観察のたびにインキュベーターから胚を取り出す必要がありました。一方、タイムラプスインキュベーターでは培養環境を変えることなく観察が可能であり、胚への負担を最小限に抑えることができます。

具体的には、

  • 受精操作後の胚の培養
    体外受精、顕微授精を行った胚を培養します。
    マイクロウェル型ディッシュを用い、一つ一つの胚を個別管理しています。
    当院で使用しているタイムラプスインキュベーターは、1台の中に9つのディッシュを培養できる個別のスペースがあり、お一人お一人の胚が、別々の隔離されたスペースで培養されます。取り違えリスクの回避に加えて、他の患者様の胚を取り出す際に影響を受けない構造となっています。

培養用インキュベーター APM-30DR

当院で受精卵をタイムラプスインキュベーターで培養する前、および、凍結胚融解後に使用しているインキュベーターです。

培養用インキュベーター APM-30DR

庫内は98%以上の体内に近い高湿度環境が保たれているため、培養液の浸透圧が安定し、安全に体外での胚培養を行うことが出来ます。

具体的には、以下の場面で活躍しています。

  • 採卵後の卵子の前培養
    採卵した卵子にすぐに受精操作を行うのではなく、一定時間安定した環境で受精前の「前培養」を行います。
  • 体外受精 (媒精) 後の培養
    卵子と精子をかけ合わせたあと、受精が起こる環境として使用します。
  • 融解後胚盤胞の回復培養
    凍結していた胚盤胞を融解したあと、移植に向けて胚を回復させるための培養を行います。
    採卵した卵子や胚を、できるだけ体内に近い環境で管理することが重要です。

精子専用インキュベーター SMA-80DR

2方向から開閉可能で、卵子を扱う培養室と精子の調整を行う検査室を繋ぐインキュベーターです。
検査室で調整を行った精子を、培養室での受精操作まで一定の適切な温度で保存しています。

毎日の点検と24時間監視体制

当院では毎朝全てのインキュベーターの内部のガスの実測値を記録しています。
各インキュベーターにはモニターがついており、温度・二酸化炭素濃度・酸素濃度が目視で確認できるようになっています。
しかし、モニターの異常があった際に大切な胚を守ることができないため
必ず1日一回内部のガス濃度を測定し、基準値から外れている場合は0.1%単位で調整を行なっています。
さらに監視システム「CISAS/V4」を導入しており、温度・ガス濃度のリアルタイムデータから、夜間や休日など培養士がいない時間帯に異常を検知した際、アラームメールが培養士に届く仕組みになっています。
インキュベーターに異常があった場合にすぐに駆け付けられるような体制を作っています。
これにより、24時間365日、患者様の大切な胚を守ることができます。

地震対策も行っています

当院は建物自体が免震構造の施設ですが、それに加えてインキュベーターには転倒防止金具を設置しています。万が一の災害時にも患者様からお預かりした大切な胚を守れるよう備えています。

おわりに

体外受精では採卵、受精から移植までの間、胚はインキュベーターの中で成長します。
患者様からお預かりしている胚の健やかな発育のため、当院では、複数種類のインキュベーターを用途に応じて使い分け、日々の点検や24時間監視体制を通じて、安全で質の高い培養環境の維持に努めています。患者様の大切な胚をお預かりする責任を胸に、今後も安心して治療を受けていただける環境づくりを続けてまいります。

監修医師紹介

河村 寿宏 産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医・指導医

河村 寿宏 産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医・指導医

田園都市レディースクリニック 理事長 / あざみ野本院 院長
東京科学大学医学部臨床教授

「不妊に悩む患者さんの望みを叶えてあげたい」という思いをもとに、不妊治療のスペシャリストとして、高度生殖医療の分野で長年尽力。田園都市レディースクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添いながら、高度な技術と豊富な経験に基づいた不妊治療を提供しています。

田園都市レディースクリニック[あざみ野本院]

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電話
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※本記事の監修に関して、学術的部分のみの監修となります。河村医師が特定の治療法や商品を推奨しているわけではありません。