先進医療について Advanced Medical Care

保険診療と併用可能な自費診療先進医療について

先進医療とは、新しく開発された治療や手術などのうち、厚生労働省から認められた「ある程度実績を積んで確立された治療法」のことです。将来的に医療保険の対象にするかを評価する段階の治療で、令和7年10月1日現在で72種類あります。このうち、不妊治療に関わるものは14種類を占めており、生殖医療の分野は新しい技術や治療法が実績を積み、進歩し続けています。
保険診療と保険適用外の自由診療を同時に行うことは「混合診療」と呼ばれます。公的医療保険制度では原則禁止とされ、混合診療に関わる費用は全て自己負担となります。
一方で、先進医療の医療費は自己負担ですが、保険診療と併用を認められています。
先進医療は有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準が設定されており、施設基準をクリアし厚生労働省に届け出た保険医療機関のみで受けることができ、当院はあざみ野本院・二子玉川分院ともに11件の先進医療において先進医療実施施設に認定されております。
(2025年12月1日現在)

当院で実施可能な不妊治療に関わる先進医療をご紹介します。

1) 受精に関わる技術について

強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術IMSI(イムジー):「Intracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injection」

特殊な高倍率顕微鏡を使用し、顕微授精に使用する精子の形態をより詳細に観察する技術です。通常の顕微授精では約400倍の倍率ですが、IMSIではより精度の高い顕微鏡で約1200倍、デジタルズームで最大6000倍の倍率まで拡大し精子を観察します。精子の頭部にある空胞(小さな泡)などの微細な形態異常を判別して排除することで、質の高い精子を選別することが可能であり、良好な胚発育や妊娠率の向上が期待できます。

おすすめ
  • 通常の顕微授精で妊娠しない方
  • 精液所見で正常形態率の低い方
  • 顕微授精での正常受精率や胚発育の低い方

ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術PICSI(ピクシー):「Physiologic intracytoplasmic sperm injection」

顕微授精で受精に用いる精子を選別する際に、顕微鏡下でヒアルロン酸を使い成熟精子を見つける精子選別技術です。
顕微授精ではDNA損傷が少ない成熟精子を受精に用いるため、形態異常がなく、運動性が良好な精子を選別しています。しかし通常の顕微授精の場合、ヒトの目での判別には限界がありDNA損傷精子や未熟精子を除外できずに受精率や胚発生率が低下してしまう可能性が報告されています。
PICSIはヒアルロン酸と結合するという成熟精子の特性を利用し、精子を選別する技術です。PICSIで良好精子を選別し顕微授精を行うことで、染色体の数的異常のある異数性胚が発生する確率を減らすという報告があり、流産率の低下が期待できます。

おすすめ
  • 顕微授精が必要な方
  • 顕微授精後の胚移植で反復流産や着床不全を認めている方

膜構造を用いた生理学的精子選択術ZyMōt(ザイモート)

ZyMōtは精子自身の運動性を利用し、特殊なフィルターで良好な精子を選別する技術です。
通常体外受精の際、受精させる前に行う精子調整は成熟精子が未熟精子よりも細胞密度が高いという特徴を利用して遠心分離をかけることで選別します。しかし遠心分離による物理的刺激が精子のDNA構造を損傷し、「精子DNA断片化」というダメージを引き起こす可能性があると考えられています。
ZyMōtを行うことで遠心分離による、精子への物理的なダメージを防ぎ、運動性が低い精子や奇形精子を除外し、良質な精子を回収し受精に用いることで受精率、胚発育率の向上、そして正倍数性胚(染色体の数的異常のない胚)の獲得率の改善が期待できます。
※運動精子の数が極端に少ない精子無力症の方、精子の数が極端に少ない乏精子症の方は選択できない場合があります。

おすすめ
  • 体外受精・顕微授精で受精率の低い方
  • 体外受精・顕微授精で胚発育率の低い方

タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

一定の間隔で静止画を連続撮影し、それらをつなぎ合わせて短時間の動画にするタイムラプス撮像法を用いて、受精卵・胚培養の過程を観察・評価する技術です。通常は観察が不可能な胚の分割や成長スピードを解析することで、正常に着床できる胚を見分けることができ、妊娠率や生産率の上昇が期待できます。
また、タイムラプス撮像法では培養器に入れたままで胚の観察が可能となるため、観察時に胚が培養器外の環境にさらされダメージを受けることがなく、培養成績の向上が期待できます。

おすすめ
  • 良好胚が獲得できず、培養成績を向上させたい方
  • 正常に着床できる胚を選び分け、妊娠率や生産率を高めたい方

2) 移植に関わる技術について

子宮内膜受容能検査1(ERA:Endometrial Receptivity Analysis)

ERA(子宮内膜受容能検査)は、次世代シークエンサーを用いて子宮内膜組織に発現する遺伝子を網羅的に解析し、胚の着床に最適な受容期(着床の窓)であるかどうかを確認する検査法です。子宮内膜組織の遺伝子発現の状況から、着床に不適切な時期であると判断した場合、検査結果に基づいて胚移植に適切な時期を導き出します。
胚が着床しやすい最適なタイミングで胚移植を行うことにより、着床率や妊娠率の向上が期待できます。

おすすめ
  • 良好胚を繰り返し移植しても着床に至らない反復不成功の方

子宮内細菌叢検査1(EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)/ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis))

子宮内膜組織を採取し、子宮内細菌のバランスが妊娠に適した状態であるかどうかを解析する検査です。次世代シークエンサーを用いて子宮内膜組織から子宮内細菌叢を解析します。EMMA検査は子宮内細菌の種類と量を分析し、ALICE検査では着床不全の原因の一つである慢性子宮内膜炎の原因菌の有無を分析します。子宮内細菌叢の異常が検出された場合には適切な抗菌薬の投与や乳酸菌製剤の使用など治療が検討されます。子宮内細菌のバランスが妊娠に適した状態であることを確認した上で胚移植を行うことにより、着床不全や流産を予防し、妊娠率の向上を目指すことができます。

おすすめ
  • 慢性子宮内膜炎が疑われる方
  • 良好胚を繰り返し移植しても着床に至らない反復不成功の方

子宮内細菌叢検査2(子宮内フローラ検査)

子宮内腔液や膣内分泌物を採取し、子宮内または腟内におけるラクトバチルス属菌の占有率を調べる検査です。子宮内は無菌ではなく細菌が存在し、近年の研究ではラクトバチルス属菌の割合(占有率)が妊娠・出産に影響を与えることが報告されています。次世代シークエンサーを用い、ラクトバチルス属菌の割合や慢性子宮内膜炎になる原因菌の有無を解析します。
子宮内の細菌環境に問題が指摘される場合には一人一人の菌環境に応じた個別治療を実施することで、着床不全や流産を予防し、妊娠率の向上を目指すことができます。

おすすめ
  • 慢性子宮内膜炎が疑われる方
  • 良好胚を繰り返し移植しても着床に至らない反復不成功の方

SEET法(子宮内膜刺激胚移植法 (Stimulation Endometrium Embryo Transfer))

自然妊娠では胚が成長しながら子宮内膜にシグナル(サイトカインなど)を送り、刺激することで子宮内膜の着床準備が進みます。体外受精―胚移植での着床不全の原因の一つとして、移植前にシグナルが送られないことによる子宮内膜の反応不全が指摘されています。
受精後の胚を胚盤胞まで培養した培養液は胚発育の間に胚自身が分泌する着床を促す情報伝達物質やホルモン等が含まれており、SEET(シート)液と呼ばれています。SEET法(子宮内膜刺激胚移植法)は、凍結保存したSEET液を凍結融解胚盤胞移植の移植日の2−3日前に子宮内に注入することで子宮内膜にシグナルを送り、着床環境を整え着床率の向上を目指す技術です。

おすすめ
  • 凍結融解胚盤胞移植を行う予定の方

子宮内膜擦過術(スクラッチ法)

子宮内膜擦過術は、胚移植を行う予定の前周期に、人工的に子宮内膜を擦り小さな傷をつける技術です。子宮内膜の傷を修復する過程で様々な成長因子などが分泌され、着床を促進する環境が作り出され、妊娠率の向上が期待されます。

おすすめ
  • 良好胚を繰り返し移植しても着床に至らない反復不成功の方

二段階胚移植術

二段階胚移植術とは、受精から2~3日目の初期胚(4細胞期もしくは8細胞期の胚)と、5~6日目の胚盤胞を、同じ月経周期に時期をずらして2段階で行う移植方法です。
胚と子宮内膜は着床しやすくなるようにお互いにシグナル交換をしていると考えられています。先に移植した初期胚がホルモンやシグナルを分泌することで子宮内膜を刺激し着床に理想的な子宮内環境に整えることで、続いて移植する胚盤胞の着床率や妊娠率の向上が期待される技術です。ただし、原則は移植できる胚は1個のみであり、合計2個の胚を移植するこの技術は通常の胚移植と比較し多胎妊娠のリスクが高まる可能性があります。

おすすめ
  • 良好胚を繰り返し移植しても着床に至らない反復不成功の方