不妊症の治療

不妊症の治療

1.はじめに

不妊治療においては、まず可能な限りその原因を特定し、原因に応じた治療を進めていきます。女性の年齢が若く、明らかな不妊原因がなければ、一般的にステップアップ法(タイミング法→人工授精→体外受精)が用いられますが、不妊原因が明らかになれば、このステップにこだわらず原因に応じた治療を進めていきます。特に女性の年齢が高い(30歳代後半以降)場合、卵巣機能低下、卵子数の減少が疑われる場合は、ステップアップ法による時間的なロスが問題となりますので、妊娠率のより高い治療を考慮します。

2.タイミング法

経腟超音波検査による卵胞や子宮内膜の計測、尿中LH、子宮頚管粘液の状態の観察等により排卵日を推測し、タイミング指導をいたします。

3.薬物療法

当院では不妊治療に対して、適宜漢方薬を併用しております。
排卵障害がある場合には、薬剤を使用します。軽度の排卵障害には、経口の排卵誘発剤から使用し、無効の場合は注射の排卵誘発剤を使用します。多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群を予防するため、経腟超音波検査を行いながら、慎重に治療を行います。また、プロラクチンが高い場合は、それを正常化する薬剤を使用します。

4.人工授精

人工授精イメージ排卵日に合わせて、ご主人に精液を採取していただき、精液を調整して良好な運動精子を集め、柔らかいカテーテルで子宮内に注入する方法です。
精子が少ない、運動率が悪い、フーナーテストが不良である、性交障害がある、等の場合に適応となります。
実施前にご主人の感染症の有無の検査を受けていただきます。
当院では良好運動精子を出来るだけ多く回収するために、専用の精子調整液を使用して遠心分離、洗浄濃縮後に人工授精を行っております。
人工授精では多くの場合、注入時の痛みはほとんどありません。出血が少量ある場合がありますが、まず心配いりません。
子宮に精子を入れるところまでが「人工」的で、そのあとは自然妊娠と同じです。
人工授精の妊娠率は女性の年齢や精子の状態により大きく異なりますが、1回あたり数%~10数%です。人工授精で妊娠した方の9割前後は、人工授精5,6回までに妊娠をされております。特に女性の年齢が高い場合は、回数にこだわらず早めにステップアップを検討する必要があります。
当院では精液の取り違え防止のため、同一時間に精液の持ち込みが重ならないよう、患者様ごとに時間を指定させていただいております。また2次元コードによる取り違え防止システムも併用し、徹底的に取り違えを防止しております。

5.生殖補助医療(体外受精、顕微授精、凍結胚移植等)

5.生殖補助医療イメージ 体外受精は、経腟超音波ガイド下に針を用いて卵巣から卵子を採取し、体外で精子と受精させ、受精卵を培養しカテーテルを用いて子宮に戻す、という治療です。
体外受精で受精が起こらなかった場合や、体外受精では受精が困難なほど精子の状態が悪い場合には、顕微授精という、細い針を使って卵子の中に精子を1個注入する方法を用います。
体外受精や顕微授精で得られ、移植をしなかった胚は凍結保存し、その後融解して胚移植を行います。
これらの治療により、これまで世界中で600万人以上の赤ちゃんが生まれたと推測されております。
体外受精は、一般不妊治療では妊娠が困難な、卵管性不妊症、男性不妊症、子宮内膜症、免疫性不妊症(抗精子抗体陽性)、原因不明不妊、等が適応となりますが、高年齢の女性やAMHが非常に低い方などは、加齢に伴う卵巣機能の低下などを勘案して、いたずらに無効な治療を繰り返すことなく体外受精胚移植の実施を考慮すべきであるとされています。
当院の体外受精胚移植実施医師は、日本産科婦人科学会の専門医の資格を有し、また、日本生殖医学会生殖医療専門医も複数おります。患者様のプライバシーについては、ご夫婦のみならず出生した児についても厳重に保護しております。
体外受精を行う際には、A:完全自然周期、B:経口の排卵誘発剤をベースにしたマイルドな刺激周期、C:排卵誘発剤の注射を連日打つ刺激周期(antagonist法、long法、short法)などがあります。当院では良好な妊娠成績と、低い副作用の発生率を考慮し、マイルドな刺激で採卵を行う場合が多いですが、患者様個々の状態やご希望に応じて、これらのいずれの方法も実施しております。
採卵は卵胞数が複数個の場合は、原則的に麻酔をして実施いたします。胚移植は初期胚、胚盤胞、いずれも選択できます。
採卵前の卵巣刺激により卵巣過剰刺激症候群という副作用が発生することがありますが、当院のマイルドな刺激方法を用いるとこの副作用は極めてまれです。多胎妊娠・分娩に伴う母児のリスクを回避するため、胚移植数は日本産科婦人科学会の会告に基づき原則1個にしておりますので、当院の現在の多胎妊娠発生頻度は1%台と非常に低くなっております。その他の副作用、合併症として、採卵に伴う出血、感染、等がありますが、これらも極めてまれです。子宮外妊娠の発生頻度は2%未満となっております。
妊娠成績向上のため、胚盤胞移植やアシステッドハッチング他、様々な方法を取り入れております。
取り違え防止のため、卵子、精子、胚の取り扱いには細心の注意を払っております。培養ディッシュには蓋と底の両方に、ID番号と氏名が記入され、当然ながら一台のクリーンベンチでは一組のご夫婦の卵子、精子、胚のみを取扱っています。培養室内のあらゆる作業にダブルチェックを徹底し、さらに2次元コードを使用した機械による照合もすべての作業において徹底して行っております。
停電時に備えて非常用蓄電池設備、および自家発電装置を設置しております。また、培養器にも24時間監視装置を設置しております。

顕微授精

体外受精で受精が起こらなかった場合や、体外受精では受精が困難なほど精子の状態が悪い場合には、顕微授精という、細い針を使って卵子の中に精子を1個注入する方法(卵細胞質内精子注入法:ICSI)を用います。

胚、精子凍結保存

体外受精や顕微授精で得られ、移植をしなかった胚は凍結保存します。
精子を人工授精や体外受精、顕微授精前に凍結保存しておくことができます。

凍結胚移植

体外受精や顕微授精で得られ、移植をしなかった胚は凍結保存し、その後融解して胚移植を行います。また、採卵周期に卵巣過剰刺激症候群の発生が疑われる場合には、その周期での移植を中止して胚をすべて凍結保存し、重症化を予防できます。

6.外科的治療

子宮内膜ポリープが着床障害の原因と思われる場合は、当院で子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術(日帰り)を実施しております。腹腔鏡下手術等が必要な方は提携している病院をご紹介させていただいております。

7.男性不妊治療

当院では、男性不妊を専門にした泌尿器科医師による男性不妊専門外来を設けており、原因に応じて薬物療法、必要に応じて精巣内精子採取術等を行っております。

8.不育症治療

不育症の検査で異常が見つかった場合に、薬物療法を行います。外科的治療は入院治療が可能な施設をご紹介しております。

9.甲状腺と不妊症・不妊治療

甲状腺は首の下方についている小さなハート形の臓器です。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン分泌が多すぎても少なすぎても、体の様々な臓器に支障を来たすとともに、不妊症の原因になることがあります。

10.不妊カウンセリング

不妊カウンセリングをご希望される方を対象として、生殖心理カウンセラー、当院の看護師(不妊症看護認定看護師、生殖医療相談士、不妊カウンセラー)が、個別にカウンセリングを行っております。

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