体外受精 In vitro fertilization

体外受精の流れの図 体外受精の流れの図

F:胚凍結

排卵誘発剤を使用した刺激周期の採卵では、多くの場合複数の受精卵が得られますが、胚移植は原則的に1個のみです。このため、移植した以外の胚が余ることがよくあります。その際には、余剰胚を凍結保存しておくと、再度採卵する必要がなく、凍結保存してある胚を融解して移植する(凍結胚移植)ことにより、再度妊娠のチャンスを作ることができ、かつ、肉体的、経済的負担を減らすことが可能となります。
また、排卵誘発剤を使用した刺激周期で採卵し、体外受精・顕微授精を実施した場合、その周期にすぐ新鮮胚移植を行うよりは、凍結胚を翌周期以降に融解し移植する凍結胚移植のほうが、一般的に妊娠率は上昇します。
その理由として、排卵誘発剤を使用した刺激周期では、卵胞ホルモンや黄体ホルモンが自然妊娠の時よりも大きく上昇する場合が多く、このため子宮内の環境が自然妊娠の時と異なり、着床に不利な状態になることが考えられます。また、クロミッドを使用した周期では、子宮内膜が厚くなりにくい場合もあり、これも新鮮胚移植周期での妊娠率をやや低下させる原因と思われます。
体外受精や顕微授精を行う前に、排卵誘発剤を使用した場合、卵胞が多数育ちすぎてしまうことがあります。(卵巣過剰刺激症候群)特に、この副作用が出ている状態で新鮮胚移植を行って妊娠すると、さらに一層卵巣が腫れて重篤な副作用が出てしまうことがあります。この副作用を避けるため、卵胞が多数発育し、卵巣が腫れすぎた場合は、採卵したその周期は意図的に胚移植を行わず、出来あがった胚を全て凍結保存し(全胚凍結)、卵巣の腫れが治まった翌周期以降に、凍結胚を移植することで、副作用を回避し、かつ、妊娠率を上昇させることが可能となります。

胚凍結法(ガラス化保存法)

体外受精や顕微授精によって作られた胚の凍結保存には、当初用いられていた緩慢凍結法から、現在はガラス化保存法に置き換わってきています。ガラス化保存法という胚凍結保存法は2000年頃から特に日本で急速に普及し、現在最もよく用いられている胚凍結法です。
このガラス化保存法による胚凍結は、胚が入っている凍結液を直接液体窒素に接触させ、ごく短時間で胚を凍結します。緩慢凍結法では氷晶ができてしまうことが、胚の生存率を低下させてしまう一因となっていましたが、ガラス化保存法では氷晶が形成されないため、胚へのダメージを避けることができます。
また、ガラス化保存法による凍結胚は、融解後の胚生存率が99%以上、妊娠率は30~45%と、緩慢凍結法と比較し飛躍的に成績が向上しております。
ガラス化保存法は、現在では国内だけでなく、海外でもこの方法による胚凍結が主流となりつつあります。

胚凍結保存のメリット・デメリット

メリット 余剰胚の凍結保存により再度採卵することが避けられる
一度に1個ずつ移植でき結果的に多胎のリスクが減る
全胚凍結により卵巣過剰刺激症候群のリスクが減る
排卵誘発剤使用により子宮内環境が悪くなっている可能性のある採卵周期での移植を避けられる
刺激周期の新鮮胚移植に比し、妊娠率が高い
デメリット 凍結融解後、胚が戻らないことがある(稀)
ガラス化保存法による胚凍結の歴史がまだ浅い(20年程度)
透明帯が固くなる(→アシステッド・ハッチングにより解決できる)
体外受精の種類による出生児数グラフ


FET:凍結胚移植
ICSI:顕微授精後新鮮胚移植
IVF:体外受精後新鮮胚移植
日本産科婦人科学会の統計よりhttp://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/
2016年の1年間で、日本で生まれた体外受精児のうち、約82%は凍結胚移植により生まれてきています。

アシステッド・ハッチング(AH)

凍結胚は卵子の外側を覆っている透明帯が胚凍結により固くなることがあり、凍結胚の融解後に透明帯が破れず、孵化が出来ずに着床できなくなる可能性があります。このため、アシステッド・ハッチングという技術により透明帯に穴をあけて孵化を手助けし、妊娠率を向上させることができます。

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